ブラックアウト

1/2
41人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ

ブラックアウト

 会社帰りの道中を愛車に乗り走ってるけど、港に通じる四車線の国道にトラックの姿は見当たらない。  苫小牧だけじゃなく、北海道中で停電してるため信号機が消えたままの状態で安全に物資の運搬などできるはずがない。  危険をともなう輸送はしてほしくないので、会社から運搬中止要請を出したいのだけど、それもできずにいる。  運送会社さんが判断をして、輸送を止めてる事を願うばかり。  港にも立ち寄ってみたけど、コンテナ船の姿はない。  沖合に停泊して様子をみてくれてたらいいのだけど、それすらも確認できないでいる。 「本当はこういう心配、課長がしてくれればいいんだけど、屁理屈ばっかり言って責任逃れする人だから・・・・・・商社マン失格よね」  私は車に乗ったまま、水平線を見つめてる。 「そうだ、お母さんに連絡」  慌ててスマホを手に取り、連絡を(こころ)みるけど回線が混み合ってて通じない。  地元に残してきた彼の声が聴きたくて何度か挑戦してみたけど、結果は同じだった。  ネットを試してみる、でも、すごく重い状態が続いてる。  何度もしつこく画面をタップ、やっとの思いで見る事ができたSNSはすごいデマが拡散してて、何を信じていいか分からない。  地鳴りが続いてるので今から六時間後にすごい本震がくるとか、苫小牧で炭酸ガス地中貯留実験CCSによるもので地震ではないとか、火力発電所から通じる送電線の鉄塔がすべて倒壊してて一年以上は電力供給が困難など、苫小牧に住んでる私が見て驚くような内容ばかり。  これを地元の彼氏や家族が見て心配しなければいいな、などと思いつつ、私は港を離れた。    車のメーターパネルを見ると、すでに燃料の警告灯がついてる。  私は給油してくれそうなガソリンスタンドを探す事なく、自宅マンションへ戻るしか手はなかった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!