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女将の案内は本当にここまでらしい。
広信と早姫は長い廊下を歩いた。
「前は、景色を眺めながら温泉に向かったのかな。」
「だろうね。釘は目新しいし最近壁を作ったのかな。」
広信が目ざとく釘を見つけて言った。
「なんのために?」
「さあ?これだけ長いし、もしかしたら冬は冷たい風が吹き付けるからその風避けじゃないか?」
「ふぅん、」
早姫は景色が見えなくてつまんなーいと辺りを見渡した。
ぞくり、と悪寒が走る。
どこからか視線を感じる。
一体どこから?
木の板は隙間無く貼りつけられている。
誰かが覗く場所は皆無だ。
いや、外の壁にぴったりと貼り付き針のような細い穴か隙間から誰かがこちらを見ているのか。
そんな妄想にかられていると、広信がいぶかしむように早姫の顔を覗いた
「早姫?どうした?」
「え?あ、なんでもない。」
気のせい、気のせい。
気のせいと思いつつもちらりと木の壁を見た。
もしや、この壁は風避けではなく、、、
誰かが覗くからだとしたら?
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