知らずの町

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結姫は冷蔵庫から水のペットボトルをとりだすと、それを持って部屋に戻った。 戻りながら直飲みでペットボトルの水を飲んだ。 スマホはベッドに置かれあった。 妹の早姫の可愛い部屋に比べて、結姫の部屋はシンプルだ。ベッドと机とクローゼット。それのみだ。 水を一口飲み、スマホを操作し妹に電話した。 「ただいま、電波の届かないところにいるか電源を切られているか」 音声アナウンスが、淡々と告げて結姫は通話を切った。 水を一口飲んで、それを机の上に置き、スマホを操作しメッセージを送った。 しばらく考えて、共通の友人何人かにもメッセージを送った。 (…どうして、こんなに不安なんだろう。) 温泉デートははじめてのことではない。 外泊もはじめてのことではない。 最初こそ、どこの場所に行く。と聞いてはいたが、あまりにも続くと、それは事後報告に変わっていった。 (早姫…早く、連絡をちょうだい。) そうしたら、この不安もどこかへ消え失せるだろう。
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