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部屋に戻ると早姫は畳に倒れこむように座った。
まだ、心臓がドクドク言っている。
息を吐いて鼓動を落ち着かせると、自分の鞄を引き寄せると、中から携帯電話を取り出した。
(結姫に、聞いてもらおう。)
姉ならば、この不可解な現象がわかるのではないのか。
電話をかけようとして、早姫の顔が大きく歪んだ。
「…圏外…うそ。」
今時、そんなことがあるのだろうか。
早姫は、よろめくように立ち上がると、電波がどこかに来てないか、携帯電話を掲げて部屋の中を歩いた。
無反応。
早姫は障子を開けた。
ガラス窓の向こうは竹林だ。
早姫は、窓を開けると身を乗り出すようにして携帯電話を掲げてみた。
「…ダメか。」
はあぁー、とため息を吐いて窓枠にもたれかけた。
何気に竹林の下を見た。
タオルを首に巻き、紺色の袢纏ハンテンを着たおじさんが、こちらを睨み付けていた。
思わず、体を引いて部屋の内へと戻った。
(ここのスタッフの方なのかな。)
恐る恐るもう一度、窓の外を見た。
そこには、誰もいなかった。
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