知らずの町

25/71
前へ
/73ページ
次へ
◇◇◇ 早姫は気をとりなおして、電波がある場所まで移動しようとし、再び部屋を出た。 (外ならば、もしかしたら電波があるかもしれない。) 軋む廊下を歩き一階へと降りた。 途中で女将さんか中居さんに会ったならば、聞けばよいかしら。 そう思っていたが、誰にも会わずに一階へとたどり着いた。 廊下をまっすぐと歩いていくと、薄暗い廊下へとさしかかった。 パタ、パラパラパラパラ 小雨が降るような音がまた聞こえてきた。 窓を開けた時には、曇空ではなかったのになぁ。と、思いつつも前へと進む。 ぎぃ。きしり、 自分の足音がやけに大きく聞こえる。 ぎぃぃぃぃぃ。 扉が開く音がして、早姫は振り返った。 引き戸の扉がわずかに開いていた。 誰かが、出てくるのかしら。と思っていたが、誰も出てこない。 早姫は、首を傾げて先へと進んだ。 いくらばか進んだ時に、早姫はあることに気づいた。 きしり、ペタ。 きしり、きしり、ペタ、ペタ。 自分の足音に合わせるように、小さな足音がする。 早姫は思いきって振り返った。 誰もいなかった。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加