知らずの町

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◇◇◇ 早姫は、目をゆっくりと開け瞼を持ち上げた。 古い茶色い木の天井が見える。 ゆっくりとまばたきをした。 今、自分はふかふかの布団に寝ているようだった。 ああ、そういえば旅館に泊まったんだったけ。 そこで、はたりと気づいて目を見開いて飛び起きた。 (私、いつ布団に入ったんだっけ?) 「お、起きたか?」 横で広信が座蒲団に座り、お茶を飲んでいた。 「え?今、何時?」 広信が床の間に置かれている置時計を見て答えた。 「4時だな。」 「朝の?」 「夕方の。」 早姫は、布団から起き上がると、広信の横に置いてある座蒲団に座った。 「温泉から戻ってきたら、お前布団敷いて寝てるし、疲れてたのか?」 「え?広信が布団敷いてくれたんじゃないの?」 早姫は、置かれている湯飲みを手に取り、電気ポットからお湯を注いだ。 「お前が敷いたんじゃないのか?」 早姫は頭を抱えた。 「あれ?私は、……ああ、そう、ここ電波がないから、電話できる場所を探して、外に……」 外に向かったはずだ。 しかし、それ以降の記憶がない。 「夢でも見てたんじゃないのか?」 からかうような広信の言葉に、早姫は首をかしげた。 自分は、温泉から戻ると押し入れから布団を出して、寝たのだろうか。
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