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知らずの町
「ねー、まだつかないのー?」
大山早姫は口をとがらせて、車の窓から見える森を見つめながら運転席にいる彼氏の高山広信に言った。
「もうすぐだよ。もうすぐ。」
「さっきもそう言ってたよー。」
車が一台やっと通れる車道に両脇は延々と森だ。
最初は新緑がキレイ~とはしゃいでいたが、代わり映えのしない景色が一時間以上続くと飽きてくる。
道は一本道だし、迷うことはないのだがこうも同じ景色が延々と続くと同じところをぐるぐる回っている気がしてくる。
「なんだ、あれ?」
広信の声に早姫は前を見た。
道の両脇に大きな木が立っている。
門、みたいだ。
その木と木を繋ぐように赤い紐が上の方にかけられている。
神社の結界のようにも見えたが、あれは綱で幣が下がっているんだったか。
木の間を通る時、上を見上げてみた。
艶やかな赤い色は退色の後がないことから最近かけられたものなのだろうか。
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