知らずの町

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◇◇◇ 階段を降りたら、女将が立っていた。 にっこりと笑い 「散策ですか?」 「はい。」 広信が笑って答えると、女将は 「ご案内いたしましょう。当方のお庭はいろんな花が咲いておりますのよ。」 女将を先頭に長い薄暗い廊下を歩く。 パラパラと雨が当たるような音がしだした。 (また、雨…) 「あれ、お前のじゃないか?」 広信の声に我に返り早姫は顔をあげた。 引き戸の隙間に青い勾玉に布の花がついたチャームがはさまっていた。 「あ、あれ」 早姫は慌てて、自分のスマホを見た。 ストラップの紐だけがついていて、その先がない。 「いつ、落としたんだろう。」 早姫は跪いて、チャームを拾おうと手を伸ばした。
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