16人が本棚に入れています
本棚に追加
早姫が勾玉の切っ先に触れようとした瞬間、ずるりと勾玉のチャームは引き戸の中へと引きずられた。
まるで、内側から誰かが引いたように。
早姫は、とっさに勾玉を掴んで自分の元へと引き寄せた。
なんの抵抗もなく自分の掌に収まった勾玉のチャームを早姫は見た。
紐は、なにか鋭利な刃物で切ったかのように綺麗だった。
早姫は、怖々と引き戸を見た。
わずかに隙間が開いている。
この戸一枚隔てた先に、誰かがいるのだろうか。
心臓の音がドクドクと耳元で鳴り響く。
早姫が固唾を飲み込んで、引き戸に手をかけようとした時
「お嬢様ので、ございましたか?」
女将が早姫を立たせようと手を伸ばしてきた。
「あ、はい。落としてしまってた、ようで」
早姫は女将の手を取ると、女将の手は氷のように冷たかった。
早姫の驚いた顔に女将はふふと笑うと
「あら、冷たかったでしょうか。先ほどまで氷を使ってましたもので。」
「あ、いえ。」
最初のコメントを投稿しよう!