知らずの町

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女将は玄関に向かった。 「お電話はこちらです。」 下駄箱とは反対方向に、昔懐かしいピンク色の簡易公衆電話が据え置かれている。 「ありがとうございます。」 「お庭は、玄関を出まして左手側にございます。では、私はこれで失礼いたしますね。」 女将は頭を下げると、足音もなく今来た道を戻って行った。 「俺は先に庭の方に行ってくるよ。」 「あ、うん。」 「小銭はあるか?」 早姫は小さながま口を出して、中を確認して頷いた。 「うん。ある。」 広信は、その言葉を聞くと、スリッパを脱いで下駄箱から靴を取り出して、外に行ってしまった。 早姫は、がま口から100円玉硬貨を取り出すと、公衆電話の小銭口に入れた。 それから、姉のスマホの番号をプッシュし、ワンコールもしないうちに、 双子の姉、結姫が出た 「今、どこ?」 開口一番にそう聞かれ、早姫は苦笑いになる。 「竹無村の竹無旅館てっとこ。」 「……そこ、騒がしいね。子供がたくさんいるの?」 そう聞かれ、思わず変な声がでた。 「へ?」 そして、あたりを見渡した。 誰もいない。 そして、話し声も聞こえない。 とても静かである。 「結姫、あのね。」 ガチャン と、唐突に電話が切れた
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