知らずの町

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◇◇◇ 早姫は、急いでまた100円玉をコイン入り口に入れた。 チャリーン お釣り口に、100円玉が落ちて くるくると回って、パタリと伏せた。 「え?なんで?」 早姫は、お釣り口からその100円玉を取ると、再度コイン入り口に入れた。 チャリーン また、落ちた。 この100円玉では、ダメなのだろうか。 ガマ口から、別の100円玉を取り出すと再度入れた。 チャリーン また、落ちる。 早姫は涙目になりながらも、今度は10円玉を入れた。 今度は落ちなかった。 安堵して、番号をプッシュしようと、受話器を耳に当てた時 ゴッボ。 ゴッボボボ。 水の音が聞こえた。 ゴッボ。 ………………を、………して。 ………は……………たし…………… そして、水の音に混じって、囁くような、呻くような、女の人の声が聞こえてきた 「だぁーめっ。」 耳元で、女の子の声がしたかと思うと、電話がガチャリと切れて、 チャリーン と、十円玉がお釣り口に落ちてきた。 十円玉は、くるくると回る。 早姫は、声のした方を振り向いた。 誰もいなかった。
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