知らずの町

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十円玉は、くるくると回転を続ける。 早姫は怖々とその十円玉を見つめていた。 (さっきのは、何?それに、子供の声…) 早姫はお釣り口に手を伸ばした。 十円玉は、パタリと伏せた。 それが急だった為、早姫は驚いた。 十円玉を指先でつまむと、ぬるりと濡れていた。 濡れていることに驚いて、早姫は十円玉を落としてしまった。 十円玉は、床を転がり靴箱の隙間へと入って行った。 早姫は自分の指先を見つめた。 指先は、煤でも塗ったかのように真っ暗だった。
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