知らずの町

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脱衣場を出ると肌寒い空気が体を包みこんだ。 広信は20分後。と言ってたがまだ5分も立ってはないだろう。 (どうしよう…広信を待っているべきなんだろうか。) それとも、長命の湯に行き広信に声をかけるべきか。 脳裏に赤い色が甦り、早姫はぶわっと鳥肌が立った。 ここに一人で待つのも嫌だし、かといって長命の湯の方に行くのも嫌だ。 どうしよう。そう思っていると、背後から ぺた、ぺたり、ぺた 水気を帯びた足音が聞こえた。 誰かが風呂から出てきたんだろうかと、早姫は後ろを振り返った。 「ひっ」 視界に濡れそぼった赤い着物が見えた。 その瞬間、早姫は廊下を駆け出していた。 (なにあれっなにあれっなにあれっっっ!!) 赤い着物に長い黒い髪が貼りついていた。 一瞬で、生きている人間ではないことが、わかった。 コンコン。 木の板を叩く音がする。 コンコン。コン。 どこから? 早姫は走りながら打ち付けられた回廊の板を見た。 コンコン。コンコン。 誰かが板の外側から叩いている。 (誰が?) 板目の隙間に、大きな目が見えた瞬間早姫は悲鳴を飲み込んで駆けた
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