知らずの町

65/71
前へ
/73ページ
次へ
ぐちゃり。 2人の少女が首だけをこちらにぐるんと向けた。 「ひっ」 梨花と舞香の口元は真っ赤だった。 そして、両手に、あれは何だろう。 真っ赤な、真っ赤な塊。 真っ赤な塊に小さな口を這わせて、くちゃり、くちゃ。くちゃ。 と咀嚼している。 「り、梨花ちゃん?舞香ちゃん?な、何を食べてるの。」 くすくす。 うふふ。 くすくす。 「鹿しゃん。」 と、2人の声は揃っていた。 「鹿?」 早姫の顔が強ばる。 「そう、鹿しゃん。」 肉の塊、と認識したとたん吐き気が込み上げてきた。 「お、お母さんは?」 二人は揃って空いてる窓を指さした。 「ぽーん。てっ」 「ぽーん。てっ」 くすくす。 うふふ。 くすくす。 「ぐちゃってっなったね。」 「ぐちゃぐちゃになったね」 くすくす。 うふふ。 くちゃり 「だってね、猪が来たんだもの。」 「ねー。でも虎さんの方が強かったわ。」 うふふ。 くすくす。 くすくす。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加