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悲鳴が聞こえて、結姫は駆けた。
懐中電灯をもらって助かった。
町では月明かりがあったというのに、ここは星明かりさえない暗闇だ。
「結姫さん待って!」
突然走り出した結姫のあとを智也が同じく懐中電灯で暗闇を照らし駆けた。
玄関とおぼしきものが見えたが、屋敷の中は暗い。
そのままそこを通りすぎ脇へと入った。
「早姫っ!!」
結姫は、悲鳴をあげている早姫を照らした。
「ゆ、結姫?」
結姫は早姫を抱き締めた。
「早姫、大丈夫?」
「わ、私は大丈夫。こ、梢さんが」
結姫は懐中電灯で辺りを照らした。
「…誰もいないわよ?」
「そんなっ!?だっ、だって、さっき、ふ、踏んだものっ」
「落ち着いて!」
早姫は震える体を落ち着かせようとした。
「早姫さん、大丈夫ですか?」
「う、植木屋さん?」
「鈴木さんに連れて来てもらったの。」
「広信さんはどこです?」
「まだ、温泉に」
智也が顔をしかめた。
早姫がここにいるならば、このまま一緒に山を降りればいいと思ったが、智也と別行動していたとは。
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