知らずの町

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障子の間の廊下を抜けると少し広い場所に出た。 二階へと上がる茶色い階段がある。 照明が少ないせいか、上へと続く場所は薄暗くておっかない気分になる。 (真っ黒なんとかが出てきそう。) 子供の頃に見たアニメが脳裏に浮かんだ。 女将が進んでいるので、慌てて早姫は小走りで追い付いた。 この通りは障子はなく、茶色い木の板の壁だ。 いや、凹凸があるから引き戸かもしれない。 障子でない分、さらに薄暗さが増す。 ざあっ、ぱらぱらぱらぱら と、屋根を打つ音がする。 突然に聞こえた音に早姫がびっくりしていると、広信が口を開いた 「雨かな?」 広信の声が反響する。 広信はさほど大きな声をだしたわけではないのに。 「雨、でしょうね。」 女将は後ろを向かずにそう言った
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