港奪還作戦

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 初めはテロリストたちによる犯行かと思われたが、その日のうちに世界中のあらゆる国で同時刻に戦闘オートマトンの襲撃があったという事実が発覚した。  各国首脳はすぐに緊急用の回線を使って連携を試みようとしたがすでに国連のサーバー自体が全面的に機能不全に陥り、各国首脳の通信も28秒で途切れてしまった。  これほど大規模な襲撃、それも世界中で同時刻に発生したことは歴史上類を見ないものだった。明らかに人間の所業ではない。AIの暴走、若しくは人間に対する反逆とみて間違いなさそうだった。この国にとって港の襲撃は一番の脅威だった。西暦三千年代に入るとすでにこの国は食料の自給率はゼロになった。それは安定した大量の輸入が斥力貨物プレーンによってもたらした結果だった。  国家どうしの関係は完全に分業体制に入り食料、工業、医療などそれぞれの分野を集中的に請け負っていた。この国では工業輸出を主とし食料は他国からの輸入に頼っていた。  一度に国民全員の数日分の食料が、国内に数か所ある巨大ターミナルに日に何度も届いていた。  しかし、どうやら今回の襲撃で国内のすべてのターミナルが占拠され、完全に輸入ルートを失った様だった。この国の食料が尽きるまでおそらく3日、長くて4日だ。  僕の所属しているエリアフォースという特殊部隊は各12人で編成されている。αチームとδチームは3人組が4グループ、γチームだけは単独行動で一定の距離を保ちつつ、目標に対して弧を描くようにして隊列を組んでいる。隊員はウエットスーツのように体になじむ光学迷彩に身を包み小型のバックパックを装備している。バックパックの中には超小型パワーソースが内蔵されていて、光学迷彩と通信機器、銃火器のパワーの一斎を賄えるようになっている。  僕は汗を拭うと仮想ヴィジョンの黄色いアイコンに触った。  頼む、せめて本部と連絡が取れれば。焦れる気持ちを抑えて仮想ヴィジョンの接続中、という表示を凝視したが5秒後にはエラーの表示が出た。前衛は全滅、同じチームからも連絡が取れず、さらに本部との連絡もつかない。はっきり言って絶望的な状況だった。パワーソースの減りも早い気がした。もしも本部や仲間との連絡が取れない状況が得体のしれない敵のジャミングだったら一度この場所から離れた方がいいかもしれない、そう思った。  
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