新しい仲間

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新しい仲間

 アルムの街は文字通り崩壊していた。安全だと思われていた研究都市だったが、AIの暴走は地下の街にも及んでいた。 「ここはなんとか制圧できたが、しかし、損害が酷すぎてな」 「なんせ研究都市だったから戦闘タイプのオートマトンは少なかったしな」  僕とミックたちは地下道を歩きながら状況を報告しあった。  ミックは身長190センチに届かんばかりの体躯で筋骨隆々の大男だ。だから僕が並んで歩くと僕の二倍くらいに見える。5年前OISに入った時に既に25歳だったから今は30くらいか。  顎に無精髭を生やし髪の毛もグレーだから側から見ると僕とミックは親子のように映るはずだ。 「おいおい勘弁してくれよなあー、隊長、知り合いを俺に襲わせたのかよー」  とさっきとは打って変わって間延びした声で言うのは、先ほど僕をナイフで襲った男だ。  彼はロメインというらしい。 「すまなかったな、てっきりテロリストの一味が地下道を通ってきたのかと思ってな」  ミックは男らしい野太い声で言う。 「ミック、反乱分子には人間もいるの?」  と僕が聞くと 「そうね、少なくともアルムの街には幾らかのテロリストが潜伏していたわ」  と若くて美しいショートヘアの女が言った。 「私はマリア、ミック隊長の下で主に後方支援をしているわ。ところで君本当にエリアフォースなの? 一体何歳?」 「マリア、エリアフォースに年齢は関係ない。能力に見合えば入隊だ」  ミックが言うと、ふーんっとマリアは顔を僕に近づけてきた。メク以外の女性にこんなに近づかれたのは初めてだったから僕は少し緊張した。メクとは違うけれどやはり少し甘い香りがした。 「照れちゃって可愛い」  マリアはもっと顔を近づけようとする。 「その辺にしといてやれよ、どう見てもガキだろこいつ」  と止めに入った男はさっきから皆にハラルドと呼ばれていて軽口ばかり叩いている。  僕はガキだと言われ今度はハラルドを睨みつけた。 「おいおい、怒んなよボク」  ハラルドは意に介さないようにまた僕を挑発する。 「そんな事よりこれから我々はどうすべきかだ」  ミックだけが冷静な口調で言う。ハラルドはつまらなさそうにへーいと返事をした。 「ダレン、きみが生きていて本当に良かった。港部隊は全滅と知らせが来ていたからな」  それと、とミックは付け足す 「そのオンボロなオートマトンは反乱を起こさなかったのか? 型が古すぎたのか」  そいつも連れて行くのか?とミックが付け足す。 「こいつにも一応だけれど戦闘モードと探知機能がついてるから、これから必要になるかも」  僕は少しだけ感謝の気持ちを伝えたけれどこのオートマトンは返事をしない。その代わりに、 「この街は間も無く崩落する可能性があります」  と無機質な女の声で伝えた。 「隊長、ちょっとまずいんじゃない?」  マリアの問いにミックは 「市民は先ほど脱出が完了した、我々はこれから軍本部に合流する」  と強い口調で4人に伝える。      
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