その三

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その三

 山賊の様な軍勢は、昼間の戦場から程近い、小高い丘に野営地を設けていた。   敵と遭遇した森を見渡すことができ、とりあえずの簡単な杭を打ったところであった。  杭の内側には、立哨が目を光らせている。  組織だった戦振りを裏付けるように、整然と輜重が運び込まれていく。  具足もまちまちの見た目とは裏腹に、兵站さえも行き届き、軍としての威容を整えていた。  山賊のような兵が一〇〇程に、手伝いの農夫五○程度が、荷役と野陣の構築に汗を流していた。  兵たちが具足を外し、労働に参加している姿は、農夫と見分けがつかなかった。  元々が皆百姓の出なのだろう。  骨柄や身のこなしに違いはなかった。  鑓働きで鍛えられたといっても、襟元や袖口から覗く痩せっぽちな肉体は、鋤や鍬を使う農夫のものと何ら変わりはない。  ただ、夥しい傷跡と、辺りを窺うような獣染みた目付きだけが、二者を分けていた。  よく見れば、農夫と思しき者たちは、目を伏せながら、兵たちとは係わりを持たぬように、黙々と己の役割をこなしているのであった。  日が落ちる頃には、あちこちに粗末な仮屋根が葺かれ、野営の準備が整った。  炊煙がいくつも立ち昇り、農夫が差配する竈の周りに、いくつかの集団ごとに兵が群れ合った。  戦場では珍しく、酒が振る舞われたのか、酔いと昼間の戦の興奮で、獣の様な喚き声があちこちから聞こえてくる。
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