その四

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その四

 鶺鴒城は、古い山城である。  元は山間の国境を守る山砦が、年月を経て、堅固な堀と塀を持ち、天守に似た大きな櫓を備えるようになっていた。  そそり立ち、落ち込む岩肌に三方を囲われ、地形を存分に活用した要害である。  戦に曝された年月が、初めは小さな砦だったものを、不落の城に変えてきたのだ。  だが、その堅固な構えとは相俟って、あちこちの塀や石垣は毀れ、山林から伝う蔓草の類が半ばを覆っており、朽ちかけた廃城のような佇まいであった。      *  大きな山間部を抱く向山藩一八,〇〇〇石は、約一○○年続いた戦国の世を、鶺鴒城を根城に、四方の隣国と領土の奪い合いを繰り返してきた。  その当時の城は籠るもので、防御に適した山城が一般的であった。  特に小勢力の集まるこの辺りでは、山間の地形を利用した山砦や山城に拠りながら、国境を維持してきたのだ。  だが、戦国の世も終わりに近づくと、向山藩は敵であった隣国と共に大勢力の支配下に納められていった。  大勢力の下で、隣国は敵ではなくなり、国境を必死で守る必要がなくなっていた。  諍いなどは、武力ではなく、大勢力に訴え出る事で解決する時代になったのだ。
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