その五

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その五

 向山城では、二人の侍が、図面を睨みながら、談合していた。 「木南の軍は、観音寺で人数を揃え発ちました」  どこか忌避するものに触れるような、殊更に丁寧な口調であった。        *  図面には、いくつもの山並みを擁した領内が示されていた。  南方を横切る街道に程近い所に、向山城と記されてあった。  向山城と街道の間には小さな城下町が細かく描かれている。  街道より北側は、小さな平野部が向山城を囲むように広がり、その外側を山々が囲んでいた。  平野部には田畑が広がり、いくつかの集落が点在している。  所領の大部分を背に抱え、向山城が田畑や山々を、街道や城下町から栓をしている形になっていた。  山裾には、木立が描き込まれ、その中の田畑寄りに、観音寺とある。  東の山々は、天領であることが示され、何も描き込まれていない。 領内であろう西と北の山並みには、植林された杉や檜の文字が記され、山道であろう線が、うねるような稜線に沿って伸びていた。  他にも、けもの道か林道なのだろう、いくつかの途切れ途切れの細い線が描かれていた。
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