その二

1/6
31人が本棚に入れています
本棚に追加
/98

その二

 小さな戦場だった。  木立の隙間のような狭い平地で、入り乱れた軍勢が喊声と剣戟を響かせていた。  双方合わせて一〇〇人に足りない程度の戦場である。    一方の軍勢は、揃いの具足に身を固め、武具も統一されているのに、もう片方の軍勢の具足はまちまちであった。  脛当てが片方しかない者や左右違う者、褌の上に足軽胴一丁の者さえいた。  一見すると、一揆か山賊の討伐のようである。  だが、鑓だけを見ると、山賊達はまだ新しい揃いの具足と同じものを手にしている。  更に奇妙に見えるのは、山賊の様な軍勢の統率された動きが、揃いの具足を凌駕していることであった。  山賊の様な軍勢は、数人の集団ごとに鑓を立て、横陣を崩さぬままに、揃いの具足に近接し、一斉に振り下ろす。  勢いのついた鑓先を叩きつけられ、揃いの具足の鑓と姿勢が下を向いたところに、鑓を揃えて突き入った。  同じ鑓を揃えながら、戦法ひとつで局面は圧倒的に変わっていく。  山賊達は、見た目とは裏腹に、訓練と統率の行き届いた軍隊であった。  揃いの具足の密集隊形が崩れたつ。  すると、堪(こら)えていたものを爆発させるが如く、山賊の様な軍勢が、横陣を解いて敵の間に躍り込んだ。  山賊共は、一転して雄叫びを上げながら、それぞれが狂った獣のように得物を振り回す。
/98

最初のコメントを投稿しよう!