第一章

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第一章

 晶は「早く十八になって深夜の仕事がしたい」そんな愚痴をこぼしながら歩き慣れた何時もの暗がりを、足元に気をつけながら歩いていた。街灯もほとんどなく、クルマもあまり通らない道には、形ばかりが立派な安物の靴が、単調で安っぽいリズムをやけに大きく響かせていた。    高いビルの影に入ったとき、突然なんの前触れもなく襲った全身のショックに、晶は気を失ってしまった。 「目が覚めたみたい」天から何者かの声がした。   ***  (まぶ)しさに苦痛を訴える。晶の目に映るのは、真っ白な天井に空気の層を照らしだす丸い光の()を作る照明と、反射的におびえる晶の顔をのぞき込む二つの顔だった。ここはどこ? 天国? 「あんた、随分と長い間寝てたんだ。もう目を覚まさないのかと心配してたくらいだよ」  誰の言葉かはわからない。いまだに意識がはっきりとしていない。もうろうとした意識のなかで、空間を泳ぐ晶の瞳に映る姿に、知っている顔はひとつもなかった。
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