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「梓の今日のメイン、スコッチエッグなんだあ、すごーい、美味しそお~」
こんなときに限って昼休みはすぐにやってきた。もう成美の手元には白米しか残っていない。計ったみたいにいつものタイミングで、彼女はやはり梓の弁当箱を覗き込む。
「…」
下唇を突き出しながら、無言で梓はチラと私に、目配せをしてくる。この局面でもう、その視線を跳ね返すことは赦されない。だって私は請け負ってしまった。
「…やめなよ、成美…」
それに――。
「えっ…」
デジャヴかと思った。さっきと同じ、視界の隅っこに刻まれる静止画の笑顔。
「そんなに、…人のものばっかり、欲しがるもんじゃないよ」
奥底に棄ててきたはずの黒い感情がそこへ、吸い寄せられるようにズシンと乗ったのを、私は見て見ぬ振りをしたかった。ただ、彼女はそれを見逃さなかったのだろう。
「……ごめんねえ…」
私の視野の及ばぬところで、彼女がどんな顔をしていたかは知らない。ただ、変わらぬ咀嚼音だけがいやに耳に障いた。
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