ジェイの雨傘

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ジェイの雨傘

三日三晩降り続いている雨は、一向に止む気配もなく、ぬかるむ塹壕の壁をゆっくりと削っていた。 足元に溜まるミルクコーヒーの様な泥水は俺たちの体温を容赦なく奪って行く。 レドリル小隊と呼ばれた俺たちの隊は圧倒的に不利で、この十日程で四マイルは後退している。 もう街はすぐ傍で、俺たちが抜かれると街は敵の手に渡る事になるのは誰が見ても明らかだった。 俺は塹壕の中で真っ赤な傘を差して、その下で小さくなりながら、ポケットから一枚の写真を出した。 幼い妹を抱きかかえ、こんな戦場に来る事など想像もしなかった笑顔で写った写真だった。 今の俺にはこんな写真を見るくらいしか心の拠り所が無かった。 いや、俺だけじゃない。 このレドリル小隊、もしかすると我軍全体がそうなのかもしれない。
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