好子と新造の母

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 「…だって、そうでしょう…誰だって、キチンと自分の意見を言ったりすれば、こちらも、対応の仕様がある。それがいつも、ニコニコしていると、柳に風というか、のれんに腕押しというか、なにをどう言っても、ボクの独り相撲になってしまう…」  米倉が、苦々しげに言う。  私は、米倉の言わんとすることが、よくわかった。  口げんかで、一方が、大声でまくしたてているのに、もう一方は、ニコニコと笑っている…  すると、それを見た人間は、ただ黙るしかなくなる…  相手がなにも反応しないからだ…  一方が、なにも、反応しないのに、自分だけ、いつまでも怒鳴っているわけには、いかない…  そういうことだ…  おそらくは、平蔵の妻であり、好子と新造の母親は、頭が良いのだろう。  自分が、なにも反応しなければ、相手も黙るしかなくなる。  それを知って、実践しているのだろう…
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