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(6)砕ける音
まあ、いいか。
自分が焦ったら元も子もないのだ。
「じゃあ、由紀子、私も適当にやってるから」
ベッドの由紀子に声をかけた。
とにかく、足の踏み場もないリビングはどうにかした方がよさそうだ。このさい、由紀子に遠慮するのもかえってよくないような気がしてきた。
あちこちに散らばったものをまとめて置き直すだけでも少しはましになる。由紀子の指示をいちいち仰ぐよりもはかどりそうだ。
遠慮がなくなると早かった。つぎつぎ散らばったものを、これも散らばっている箱や袋類にまとめ上げていく。
床が見えなかった部屋が目に見えて片付いてきた。だんだん亜紀は面白くなってきた。
『自分の部屋も、こんなにすぱすぱ片付けられるといいのになぁ』
そう思って、にんまりしてしまった。
そうしているうちに、開きっぱなしのままうち捨てられているノートを見つけた。由紀子らしい端正な文字が並んでいる。
あ、これは見ちゃいけないな、と閉じようとした時、赤文字の一行が目に入ってしまった。
『自分のなかのものが砕け散るとき、本当にぱりんと音がする』
亜紀の手が止まった。
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