攻防

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攻防

マルタイ取り逃がす 報はたちまち埼玉県警本部から警視庁へ伝えられた。戸田橋から板橋区へ、国道17号中山道を通過中と。警視庁では、一番近い署が志村警察署であり、マルタイが署前を通過時間は戸田橋からだと推定17分。時刻は午後10時41分予想。橋の通過から経過している時間は3~4分。事は急を要する。志村警察署の出した作戦は、署前車道を閉鎖、後方から埼玉県警車輌で挟み撃ちにする方法だ。マルタイの情報は既に暑内に共有されており、情報不足のために取り逃がすことはない。作戦成功に向けマルタイ通過を阻止すべく、後10分で検問設置を完了しなければならないため、交通規制課を中心に作業が進められる。「しかし、取り逃がしって迷惑ですねぇ」「まぁ、そう言うな。我々だって同様の状況になるかも知れんのだから。」そのような会話が現場では聞かれた。そして、パトカー上部へ検問表示の点灯をし、準備完了のはこびとなる。後は獲物がかかるのを待つのみとなった。 田口洋介は南下を続けている。何事もない調子で運転中だ。但し、気になる光景はあった。検問のような準備を橋の手前で警官がしていた。『用心した方がいいか?』カーナビの情報でルートの変更設定をする。国道を離れ、一般道から池袋に行くことにした。『捕まるのは嫌だ。何故か?俺が悪くないからだ。』志村警察署前の検問まで後3分の出来事である。田口は一般道に入ると、警官が信号付近に立哨しているのを目にした。周囲を警戒しているように見える。『まずい・・』うつむき加減に運転していると、偶然信号が赤に変わり足止めを食らった。警官がこちらを凝視している様子が目に止まる。資料を手に、2~3回こちらと資料を見比べしているのが明らかだった。『限界だ!』田口は信号が変わる間もなく車を急発進させる。警官が慌てて制止しようとするが、思いきりアクセルを踏み込んだ車は止まらない。まだ横断中の人々がいる中、人2人を跳ねその場から逃亡した。現場にいた警官は警察無線でマルタイに遭遇。人2人を跳ね逃走中と伝える。重傷1名、軽傷1名。署員からの連絡を受け、志村警察署からマルタイ確保に向け、検問に配置していた全車輌を追跡に回し、想定されるルートも断定。同時に警視庁本部にもマルタイを確保できなかった報告を行った。警視庁本部より警視庁航空隊へ出動要請が入り東京ヘリポートから2機も出動する緊急事態。警視庁ヘリが上空を旋回。間もなく、逃亡車輌を発見するも、地上では惨劇が行っていた。 警視庁ヘリから見えるマルタイの車は、信号無視を繰返し、途中、何人かを轢いていた。ヘリから見て予測する行き先は、このままだと池袋駅周辺。ワールドカップサッカーの試合中継が丁度終わった時間帯で、交差点には多人数の往来がある。渋谷駅ほどの人数ではないが、惨劇が予測された。「現在、マルタイは非常に危険な状況にある。殺意を持っての暴走状態だ。予測到達地点は池袋駅。必ず進入を阻止するため池袋駅周辺車道にバリケードを設置!合わせて池袋駅周辺横断歩道を一時閉鎖する!駅への歩行ルートを同時に考察のうえ誘導。現場状況を見て対応するように!」警視庁対策本部から警視部長の指示が池袋警察署に伝わる。所轄の埼玉県警にも情報を共有。志村警察署、埼玉県警のパトカーが後方からマルタイを追走。その数20台を越える。池袋は目の前に迫っていた。
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