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ドカッ!!!
「うっ」
大地の鳩尾に眞知子の強烈なパンチが入った。
「はぁーー気がすんだっ!」
「イタタタ、眞知子 強っ」
スッキリした眞知子の顔を見て大地は腹を撫でながら笑った。
眞知子は職場の休憩所にあるコーヒーを紙コップに2つ入れ無言で大地に手渡し椅子に腰掛けた。大地もその隣にある椅子に腰掛けた。
「わざわざ職場まで殴られに来なくても良かったのに……つーかさ、何あの男。顔だけ良けりゃ良いって訳?中身あんの?」
「うん。それはとても…いい奴だよ」
「………やめてよその乙女面」
「ごめん眞知子」
「別に。もう良いわよ一発殴れたし?
………それからコレ」
眞知子はスーツの胸ポケットから大地の部屋の鍵を出し大地に手渡した。
「はぁーーっスッキリした!コレで微妙な場面に出会さなくて済むわっ!!」
「うっ!こ、この度は……」
「だから。もう良いっていってんでしょ」
「う、うん……俺も……コレ、眞知子の部屋の鍵」
「うん」
眞知子の出した手に大地は鍵を乗せた。
「それじゃあね」
そう言うと眞知子は立ち上がり、ひらりと手をあげ、颯爽と大地の前を立ち去る。
《眞知子はカッコよくて良い女、だけど……俺に必要なのは眞知子じゃ無かった。眞知子、ありがとう》
眞知子の後ろ姿を見届けてから大地は真知子の職場を後にした。
あの晩。結局場がシラけてまたしても行き場を無くした精子は翌日オナって吐き出した。
その後大地自身も忙しく川端との時間が取れずにいたが……やっと今夜、川端が大地の部屋へ遊びに来る。
《穴(ケツ)も綺麗にしたし、毛も処理済み!
布団も干してフカフカだし、何なら床でワイルドに愛し合っても良い!さぁどっからでもかかってこい〜♡》
またしても妄想して浮き足立った大地は、すれ違う人の視線に気付いて我に帰る。
それでもニヤニヤが止まらない。足早に町の商店街を通り過ぎ、団地を抜け、出会った公園までたどり着いた。
あの時の出会いがつい最近の事のように思える。大地は川端の言葉表情全てが愛おしくて、堪らない。この関係がいつまで続くのかなんて誰にもわからない。けれど大地は全力で川端を愛し始めた。
そして、それだけで充分な気がした。
「さぁ今晩はすき焼きだぞーーー」
《生卵沢山付けてね♡!》
おしまい
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