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「っ、……見てなんか無いよ?ベランダには良くタバコ吸いに出るんだ。今日は、その、君が落としたタバコを渡そうと……」 大地はポケットからタバコを取り出して男に差し出した。男はそれを無言で受け取り、ポケットの中へ入れた。 《え?ありがとうも無いのかよ?どうなってるんだ今時の若い奴は……そんな態度じゃイケメンも台無しだな》 男は相変わらず無表情でタバコを吸っている。大地も仕方なく無言でタバコを吸った。 夜の公園はとても静かで。電灯のジーーッという音だけが小さく響いていた。 公園でタバコを吸うのも悪くないなと大地は思った。ここからは大地の住むレトロなアパートを背に、公園の木々の様子や砂場にブランコ、全てが月明かりに照らされて独特な雰囲気がある。景色の見え方がベランダからと違い、大地は新鮮な気持ちになった。 《見知らぬ公園の訪問者へ弾んだトークなんかを勝手に期待した俺が馬鹿だったけど……何気にリフレッシュさせて貰った》 ふーーっと煙を吐き、残りわずかになったタバコの火を消して帰ろうと立ち上がったその時、グーーーーーっと盛大に男が腹の虫を鳴らした。 視線を男に戻すとやはり真顔のまま、タバコを吸っている。 「腹、減ってるの?」 「……うん」 《うん?"うん"だと?なんか可愛い……や、こんなイカつめの男が可愛いとかも変だし礼も言えない様なヤツだぞ…》 「良かったら作りすぎたカレーあるけど」 「カレー……」 「や、嫌いだったら良いんだけど」 《なんなんだコイツ……片言すぎだろ。俺よりコミュ能力無くね?……そして何故俺も気を使ってる?つーかその前に何故こんなヤツを部屋に誘ってんだ……》 「食べたい」 男は顔を上げて俺を見た。 《ヤバイっ……変なヤツだけど顔だけはマジにヤバイ。イカツイのにカッコ可愛い!このイカメンめ!……イカメン?まぁいいや……とにかくなんかギャップ萌え的な………》 目が絡んでクラクラして椅子に手をつこうとしたところを男に支えられた。 「わ、……」 「……」 「ごめん、大丈夫だから」 《かっこ良過ぎかいっ!!ってこの体勢……顔近いっ顔がぁーー近いっ!!》 支えられたまま、男にじっと喰い入るように見つめられて大地はドギマギした。 「なんでそんな目で見んの?」 「へ?」 「いい歳して飯もロクに食えない仕事なんかしてんなよって……そんな目……」 「そ、そんな目で見て無いって!」 《にやけてたと思いますけど!?》 「忙しいけど今の仕事俺好きなんだ。けどそれだけじゃ駄目なのかな……」 《め……めんどくせーーーっなんじゃこいつ》 「や、あの、本当に違うって、良いと思うよそういうの。とにかくさカレー、食べに来なよ」 「うん」 《……なんかとんでもないヤツに声かけちゃったかも……》
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