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「姉と彼氏と彼氏の彼女?」
ボブカットの女子高生に目を奪われた雄馬は、一緒に入って来た男子の姿に息を呑んだ。
友人に聞いていた姉に告った男子高校生のイメージにどんぴしゃりだ。
雄馬の脳裏でいろいろな情報と感情が入り混じる。
(何?姉ちゃんに言い寄った男に彼女が居る?)
彼女が居るのに姉にも声をかけたというのか。雄馬の脳裏に純真な弟の怒りが渦巻く。
取り立てて姉弟の仲が良いわけでもないし。アニメの観過ぎの中学生の様に姉にあらぬ感情なぞ抱いた事もない雄馬だが。男が連れている女子が可愛い事も手伝って、姉が侮辱されたような気がして堪らない。
無意識に目の前のパフェを乱暴に掻き回してしまい、パフェグラスの中は謎物体の塊になってしまったが、雄馬は躊躇なく口に放り込んでテーブルについた女子を見た。
(それならそれでこの実態を姉ちゃんに報告して。大事な姉ちゃんを毒牙から守るだけだ)
ところがそんな雄馬の意気込みを嘲笑うかのように、男子は女子と同じテーブルにつかず、隣のテーブルに腰を落ち着けた。
(???)
雄馬の戸惑いなぞお構いなしに、二人は別々にメニューを眺め始めた。
(なんだ。カップルじゃないのかよ)
思案する雄馬の耳に又誰かドアを開ける音。
「わりぃわりぃ。遅くなった」
言いながら高校生と思しき男子は雄馬の姉に告白したと思われる男子の座るテーブルに座った。
予想外の展開にしばし大人しく様子を窺おうと、さっきまでの激情はあっさり引いた雄馬は最早パフェだかココアだかわからなくなった代物をストローで啜り始めた。
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