ウタウタイの社

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 詠唱京。  碁盤の目のように家屋が建ち並ぶこの街では歌占という呪術を使うものたちが住み込みで働く社があるが、住民たちの中にそれを知るものは少ない。  「この社で短歌を詠むものは、そのことを誰にも口外してはなりません。社のこと、歌占のこと、ここで働いていることも含め全てです。口外した場合は歌占の効力がなくなってしまうからです」  ウタウタイの社に代々伝わる社訓。新しく入社したものに一番最初に教えなければならない。ここでは社の長であるツボネの仕事。社の門を叩いたコマチという女に教えたが、彼女は目を丸くして驚いた。  「この社は、そんな規則があるんです?」  「先祖代々、社に伝わる社訓です。社訓を遵守している間は神さまと繋がることが出来ると、この社では言われて来ました。あなたがどうやって社のことを知ったのかはお訊ねしませんが、社のことを教えたひとは、とうにここを退いたということです」  「わかりましたツボネさま、私はどのようにして短歌を詠めば良いのです?」  コマチは早速、社での仕事内容を訊ねた。
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