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食事処の一同が途端に血相を変えた。
「ストク院の方角は、家相が良くないんですよ。ストク天王さまの呪詛が強いため草一本生えず、ネコ一匹すら足を踏み入れない禍々しき場所なのです。行くだけで呪いを受けることになりますっ!」
「そうなんですか? コトダマを正せば、ストク天王さまの呪いを解くことは出来るのではないのですか?」
「あなたの神受性では、まだ未熟です。わたくしどものものでも、ストク天王さまの放った呪いを解くことは不可能です」
ウタウタイの社では短歌を詠うのに必要となる精神性を神さまのことばを受け取る能力という意味で、神受性と呼ぶ。
入社したばかりのコマチが不用意にストク院に近付くと、呪いを解くことはおろか、返り討ちに遭う。とツブネは説明する。
「兎に角"わたしは行きません"と言いなさい」
「わたしは、行きません」コマチは肩を落として行かないことをツブネに伝えた。
「藤花祭までは日にちがありません。休憩が終われば、残りの短歌を詠い終わりましょう」
ツブネはお茶の茶器やお碗を片付けながら、歌占職人たちに指示を出した。
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