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「どうやって詠えば良いんだろう」
「深く瞑想し、自分と神さまを繋げるのです。神さまは綴るべきことばを下さりますから、一時一句漏らさずに紙面に綴りなさい。休憩のお時間にはこちらから合図しますが、それ以外は外出せぬこと。また誰も入れてはなりません」
「なんだか写経みたいですね。わかりました」
コマチは深呼吸を一つ。ゆっくりと目を閉ざし。神さまからことばを授かるのを待つ。静かな室内は短歌を詠むのには最適だったが、コマチの胸中は雑念が蠢くばかりだ。
門外不出という規則に、膨大な短冊の量。神さまから授けられたことばを一時一句、寸分違わず詠み上げていかなくてはならない。恐らくは、美しい文字を書かなくてはならないだろう。休憩までは外出も出来ず、誰も部屋に入れられない。今日一日で倒れてしまいそうだ。これを藤花祭の前日までに続けるとなると、続けられるかどうか心配が絶えない。やれやれ、大変なところに来てしまったものだ、と。
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