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閉ざされた部屋の向こうで、鈴の鳴る音がした。
光陰矢の如し、コマチがひと月分の短歌を漸く詠い終えた頃には、社では休憩を迎えていた。部屋に籠って長く短歌を詠っていたように感じていたコマチだが、あっという間のようだった。
社の食事処では、ツブネを始めとする歌占職人たちが集まり、お茶を飲んでいた。
「コマチさん、ご苦労さまです。お茶で喉をお浄めながら、休憩して下さい」
ツブネが、コマチの茶を用意する。
「済みません、戴きます」受け取った茶を一口啜り、一呼吸するとコマチは、ツブネに質問をする「幾つか、お伺いしたいことがあるんですが」
「短歌の内容以外のことであれば、お答えします」
「内容以外のこととは、どういう意味でしょうか?」
「人に話すということは、即ち、ことばを解き放す。あるいは手元から手離すという意味があると言われています。短歌の力が衰えてしまいますので軽んじて歌占の内容を話すべきではありません」
「何故、そうなるのです?」
「詠唱京は昔からミタマが信仰されており、ミタマの中で最も強いちからを持つものが、ことばに宿るミタマ、コトダマだからです。短歌はそのコトダマと、詠うことで宿るオトダマ、語数に宿るカゾエダマの三位一体で作られます」
「コトダマと、オトダマ、カゾエダマ」
社で使われる専門的なことばを並べられるが、コマチは単語を記憶するのに精一杯で理解が追いつかない。
「コトダマは、使い方を違えると呪いや大病を煩うことになってしまいます。特にわたくしども歌占職人は、ことばに注意しなければなりません」
「呪いや大病を患うとは、どのような病に冒されるんです?」
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