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人間11日目
「きゃー!マリコさん、お久しぶりです!
あ、ご結婚、おめでとうございます!来月、結婚式なんですよね!ウエディングドレス姿、綺麗だろうなー!」
あおいは、マリコさんに抱きつき、ハイテンションで話しかける。マリコさんも、にこにこしながら、あおいの頭をよしよしと撫でている。
黒髪ロングのきれいな女性。年は20代前半くらいだろうか。紺色のシックなワンピースが、よく似合っている。
マリコさんの祖父は、資本金500億円の企業、株式会社Takehiko Homeの名誉会長だ。もともと林業を営んでいた祖父は、第二次世界大戦終戦後、空襲で壊滅的な被害を受けた東京を目の当たりにし、建設業に乗り出した。今では、CMでお馴染みの有名企業となっている。
マリコは、そんな祖父の末娘と婿養子の間に産まれた一人娘である。つまりは、お嬢様というわけだ。
ド庶民である あおいと、お嬢様であるマリコさんは、子どもの頃、同じピアノ教室に通っていた。年も離れているが、何故か二人は意気投合し、仲良くなった。以来、10年来の友人だ。
マリコさんは、上品に笑って言う。
「ありがとう、あおいちゃん。本当に久しぶりね。高校生になって、さらに美人になったわね。あら、ちょっと胸も大きくなったんじゃないかしら」
「いえ全然。美人だなんてそんな。胸だって洗濯板だし、性格もゴリラだし…痛っ!」
余計な事を言って、あおいに殴られる信二。
「すみません、マリコさん。馬鹿は放っておいてください。
あの、お願いがあるんですが」
「お願い?」
あおいの言葉に、首を傾げるマリコさん。
「マリコさんのおじいさま、スケボーにハマり、この街にある別荘の敷地内に、スケボー練習場まで作ってしまったとお聞きしました。
私たち、ちょっと事情があって、スケボーの練習場を探しているんです。もしよければ、お借りできないかと思いまして」
「構わないわよ。おじいさまも喜ぶと思うわ」
マリコさんは、目を細め、遠くを見るような目つきで言う。
「あの時、私と彼との結婚を、おじいさまが認めてくださったのは、とあるスケートボードのおかげなのよ。あのスケボーには、心から感謝しているわ」
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