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会長は語り始めた。
大事な孫娘が、どこの馬の骨とも知らない男に盗られてしまう。そう憤慨していた時、このスケボーに乗ってしまい、長い坂道を駆け下りてしまったのだ。
怖かった。だが、高揚感も感じた。子供の頃のように声をあげて、大笑いもした。
自分の力を信じて、先の分からないものに向かってゆくワクワク感。失敗して失敗して失敗しても、それが次に繋がっていく、その充実感。
「そういうことを思い出させてくれたのが、このスケボーなんじゃよ」
『加藤信二』のサインを、愛おしそうになぞりながら、会長は呟いた。
そして、人魚姫の方をまっすぐ見て、会長は言う。
「お嬢さんのもとに、このスケボーがたどり着いたのは、きっと運命なのだろう。
練習場は、好きに使いなさい。その方が、このスケボーも喜んでくれるじゃろう」
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