人間初日

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「それ、おまえのTシャツとロングスカートだろ、あおい。なんか、この人が着ると、雰囲気違うな。どことなくエロいというか。 …あ、分かった!胸の大きさが違…げふっ!」  再びあおいに殴られて、半回転しながら吹っ飛んでいき、砂浜に倒れる信二。  あおいは、信二を殴った拳をさすると、人魚姫に向かって、優しい声で言った。 「うーん、確かにスポーツブラじゃ、この胸はカバーできないわ。かといって、貝殻で隠すのもちょっとね。 ね、あなたの名前は?どうしてこんな、地元民しか知らないような海岸にいたの?」  矢継ぎ早に質問され、答えようと口を開ける。だが、言葉の代わりに出たのは、息の音だけだった。 …そうだった。薬の副作用で話せないんだった、私。  困った顔で、人魚姫はあおいを見る。  チェックのビキニの上に、白いTシャツ姿。さらさらした、肩まで伸びた髪。利発そうな、はっきりとした顔立ちのあおい。 「もしかして、記憶喪失?しかも失語症?」  あおいはしばらく考えこんでいたが、名案を思いついたかのように、ぱっと顔を輝かせる。そして、人魚姫に言った。 「じゃあさ、記憶が戻るまで、うちにおいでよ!この馬鹿信二と私、家は隣同士なの。二人で、あなたの記憶が戻るまで、手助けしてあげる!」
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