スケボーとの運命の出会い

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スケボーとの運命の出会い

「痛っ!」  海の中を漂っていた物体が、頭にぶつかった。  人魚姫は、後頭部をさすりながら、周りを見渡す。長くてウェーブのかかった、ミルクティーのようなベージュカラーの髪。その美しい髪が、人魚姫の動きに合わせて、海のなかでゆったりと揺れた。  人魚姫は、漂流してきたその物体を手に取り、上、下、横と、あらゆる方向から眺めてみる。 「これは何かしら。木の板?」  いや、ただの木の板ではなさそうだ。  細長くて丸い板。板の両端は、上向きに反っている。  表面は、ゴムのような素材。その上に、原色の絵の具でマーブリングしたような、色鮮やかで目立つデザインが施されている。  裏面は、ベニヤ板がむき出しになっている。留め具のようなものと、4つのタイヤ。さらに、『加藤信二』という、人間の名前らしきサイン。  動物の歯型のようなものが、あちこちについた、傷だらけの謎の板。 「亀じいさま。これは何かしら?」  長寿、物知りで有名な、大きなウミガメのじいさん。甲長だけでなんと187cm、体重は916kgの巨大なカメだ。噂では、恐竜という生き物が活躍していた時代から、生き続けているらしい。 「それは、人間が使う『スケートボード』。略して『スケボー』じゃな」 「スケボー?」  首を傾げる人魚姫のために、亀じいさんは、口から巨大な泡を吹き、何やら呪文を唱える。すると、泡が光を放ち、その中に、地上の人間の姿が浮かび上がった。  傾斜のある道で板を滑らせたり、板の上でジャンプしたり、半円を描くように走らせたり。  まるで踊っているかのように、板を自由自在に操る人間たち。どの人間たちも、スケートボードの上ではとても楽しそうだ。 「なんてすてきなの!私も、この人間たちのように、スケボーとやらをやってみたいわ!」  人魚姫は、スケボーの魅力に、すっかり取り憑かれてしまったのだった。
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