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人間20日目
人魚姫は、毎日のように会長別荘の練習場で特訓し、メキメキと上達していった。
「しまった…。もう、教えてあげられる技がない…」
信二は頭を抱えていた。
初心者、中級者向けの技は、おおかたマスターしてしまった。これ以上は、さすがに信二も知らない。知らないものは教えられない。一体、どうしたらいいのだろう?
と、あおいが顎に人差し指をつけたポーズで言う。
「そういえば、河川敷公園に、プロみたいなスケボープレイヤーがいるんだって。しかも女性!夏になると、毎日スケボーをしてて、踊ってるみたいに綺麗なんだって。
ね、ちょっと見に行ってみない?」
「…って、誰もいねえじゃん」
信二は文句を言いながら、まわりを見渡す。
河川敷公園に到着したものの、誰の姿も見当たらない。川辺にいる野鳥が、呑気に羽を休めているだけだ。
ふと、スケボーを見た人魚姫は、『加藤信二』のサインの他に、もうひとつサインがあることに気づく。
(あれ?)
マジックで書かれた、相合傘のマーク。相合傘の中には、二人の名前。人魚姫は、何故今まで気づかなかったのかと疑問に思いながらも、顔を近づけて、名前を読み取ろうとする。
と、急に相合傘のマークが、黄金色の光を放ち、輝き出した。
(えっ!)
戸惑っている人魚姫を、一気に光が包み込む。
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