いけない

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 そうか、おまえはいけないか。  では、他の者に訊こう。  天井の隅のモノがザァッと消えた。  真っ赤で大きな口から牙を剥き出しにしていたモノが。行けない。その言葉で居なくなった。  もしあの声を、夢の中のものだとして。  違う漢字を思い浮かべていたら。  ホラー小説でよく出てくる漢字に変換していたら。わたしは今頃。  ……どうなっていたか、というその後はこれを読んだ人にゆだねる。  だからせめてものわたしの誠意。  読んでくれてありがとう。  あなたも気をつけて。  午前三時。  誰かから〝いきたい〟と訊かれたら。  この話を思い出して。  行けない。  そう言い、あの赤大口の化け物を、他の人に追いやって。  忘れないで。  夜中にホラー小説を読んだときは。  絶対にね。
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