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鷹城は、腕に抱いた愛しい恋人を、そっとベッドの上に下ろした。
結局、何度果てたか数えるのが追い付かないほどイかせまくって、気を失うまで抱き潰してしまったのだ。
お互いの体液でドロッドロになった身体は、もちろん胎内まで丁寧に洗い清めてある。
いくら陽太に可愛くねだられたからとはいえ、コンドームも着けずに中出ししまくってしまったのはよくなかった、と鷹城は小さく反省していた。
お腹を下さないといいけれども。
毛布をかけ、その上からそっとお腹のあたりを撫でた。
陽太を不安がらせてしまった。
そのことも、鷹城はもちろん自身を不甲斐なく思って強く自責の念を抱いている。
東京にいるとき、ほぼ毎日会っていたわけだし、出逢ってからはおそらく、家族といる時間よりも鷹城と過ごした時間のほうが長かったのではないかと思えるぐらい一緒の時間を過ごしていた。
だから、同居するとなったときも、特別抵抗なくやっていけると思っていたのだが。
デートするだけの状態と、一緒に住むというのとはやはり違ったのかもしれない。
デートするだけのときは、当然鷹城もその時間は仕事を片付けてから過ごしていた――時には例外のときもあったけれども――から、陽太だけに集中して構い倒していられた。
しかし、一緒に生活するとなると、特に鷹城のような仕事は、どこからどこまでがが仕事なのか、プライベートな時間との区別がわかりにくいから、陽太はどのタイミングで甘えていいのかがわからなくなってしまった、そんなところではないだろうか。
陽太は相手に気づかれないよう、さりげなく自然に気遣いのできる子だ。
円滑に同居生活を送るために、甘えたいときもさみしいときも、鷹城の邪魔にならないよう我慢していた。
だから、不安を溜め込んでしまって、あんなふうに泣かせてしまったのだ。
そうでなくても、親元を離れて、大学という新生活に飛び込んだばかりで、期待ばかりではなく不安もたくさんあっただろうに。
そのことに気を回してあげられなかった自分が、本当に腹立たしい。
そして、陽太が負のスパイラルに落ち込んでいることに気づけなかったことが、彼を一人で置いていくことを回避しないという選択をすることになり、結果、暴漢に襲われるような事態を招いたのだ。
すうすう、と穏やかに寝息を立てる陽太の、その顎にはまだうっすらと痣が見える。
目につく場所に痕は残さないで、と普段から言われている。
だから、その痣をキスマークで上書きすることは許して貰えなかったわけだ。
鷹城は痣にじっと視線を注いだまま、普段あまり見せることのない厳しい顔で何事かを考えていたが、陽太の額にかかる髪を指で何度かいとおしげに梳いて、それからそっと寝室を後にした。
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