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この時代の人類に対して、間違いなくベガは”神”であった。
しかし、今、この瞬間に彼に出来るのは、ただ摩天楼の谷間に立ち尽くし、そぼ降る雨にその身をさらすことだけだった。
”なあ、このサイボーグの改造された体だけってことは、俺は、丸裸だってことなんだよな”そんな益体もないことを考えてしまう。
しかし彼の異様な巨体も、このNYでは、不思議と違和感がなかった。
彼がここにいるのは、まさに、その故だった。
メイン財団の招聘を受けたトランシルバニアのジーベンビルゲン公国のプリンセス・ルーナの護衛兼地球大連盟エスパー戦団の参謀という肩書きも、無意味だ。
間違いなく、超古代の原人の社会に迷い込んでしまった現代人よりもっとひどい文明落差なのだ。
”わたしに、いったいどうしろというのか!”
確かに、この世界に攻めてくる幻魔から、この惑星の住人を守るという使命を受けたと考え、彼らが自分を必要としてくれたのが、再起の第一歩だっだが、平穏な時間が過ぎて冷静になって見れば、その違和感は、あまりに明白。
”これは、何の罰なんだ!”
まだ、どこかの無人の惑星に漂着でもしていたほうが、よほどか諦めがつく。言うまでもないが、サイボーグ戦士ベガの体には、完璧といっていい”自己修復機能”がついており、彼が自殺を試みても、何度でも蘇るようにしつらえられていた。大連盟は、なんであれ彼の死を許さなかったのである。
彼の戦士としての価値という以上に、それまでに彼の改造のために投下された”銭”が尋常な額ではないからだ。その成果が”量産タイプ”に展開されたとはいえ、”永遠の実験体”としての戦士ベガの位置は不動のものであった。
そして、彼の初陣から地球の時間でおよそ200年・・ついに、彼は、”宇宙戦艦”になった。
彼の改造された肉体を直接”宇宙戦艦”に接続したのである。
”生きた宇宙戦艦”と化したベガは、大連盟の予想では宇宙最強のはずだった。
だからこそ、彼を中心に形勢不利となったアンドロメダ大連盟軍の切り札として、幻魔の中心たる”幻魔大王”に一気に奇襲特攻を仕掛ける”天一号”作戦が誕生した。
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