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俺
目が覚める。膀胱が膨らんでいる。
時計は3時を指している。
俺は安心して、ほ、と一息ついた。
「けったいな夢や」
俺は起き上がる。
便所へ向かう。廊下を歩くと、ギシギシと音がする。ここで父は死んでいた。
俺は、父を見ていた。俺に助けを乞うように、手を伸ばす父を見ていた。ただ、父が死ぬまで黙って見ていた。
俺は言う。寝てて気付かなかったんや。
「ころしたのは、おまえや」
ズキリ、声がする。頭がいたい。
居間の襖から明かりが漏れている。襖を開ける。
母はここで死んでいた。机に頭をつっぷして、呻きこちらを見ながら。責めるような目で見てくる母が疎ましかった。
俺は言う。寝てて気付かなかったんや。
「ころしたのは、おまえや」
ズキリ、声がする。頭がいたい。
時計を見る。3時で止まっている。なぜ明かりがついているんだ。電気は止められているのに。
頭の痛みは止まらない。
膀胱が膨らんでいる。
頭を押さえながら便所へ向かう。ドアを開けると、人が出てきた。咄嗟に避けると、それは人形のようにごろりと転がる。顔を見ると、それは俺だった。
死亡時刻本日午前3時頃(推定)、俺は便所で脳出血を起こして死んだのだ。
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