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小学生のころ、学校から帰ってくると必ずおばあちゃんがいた。お母さんはパートに行っていたから、遊び相手はいつもおばあちゃんだった。
「おばあちゃん、お手玉やって」
わたしはおばあちゃんのお手玉を見るのが好きで、いつもそうねだった。おばあちゃん手作りの、赤い生地と黄色い生地で作ったお手玉だ。
「いいよ。こっちにおいで」
おばあちゃんはわたしの目の前で、器用にふたつの玉を放り投げた。赤と黄色の玉が宙を舞って、くるくると入れ替わる。
「わー、すごーい!」
「チョコちゃんもやってごらん」
おばあちゃんの手からお手玉を受け取りやってみる。だけど上手くできない。
「チョコの下手くそ」
漫画を読んでいるお姉ちゃんが、横から口を出す。わたしはぎゅっと唇を噛む。
「大丈夫。チョコちゃんもできるようになるよ。一緒に練習しよう」
おばあちゃんはそう言って、根気よくわたしにお手玉を教えてくれた。
やさしくて、わたしの知らないことをたくさん教えてくれたおばあちゃん。
大好きだった。もちろんいまでも……
「おばあちゃん」
骨と皮だけのような、おばあちゃんの手をさすりながら呼びかけてみる。だけど返事はない。おばあちゃんは、うとうとと眠ってしまったみたいだ。
最近のおばあちゃんはよく眠っている。その代わり夜中に騒ぎ出したりして、お母さんは眠れなくて困っている。
わたしはおばあちゃんの手をさすりながら、静かに目を閉じた。
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