土曜日

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「あともうひとつ、昨日あんたに言いたかったんだけど」  リュックを持って突っ立っているわたしに、お母さんが言う。 「おばあちゃん、今度施設に入ってもらうことになったから」 「え?」  わたしは顔を上げてお母さんを見た。 「まだこれからいろんなところに相談していくんだけど。お父さんと決めたんだよ」 「な、なんで?」  わたしの声に、お母さんが不思議そうな顔をする。 「なんでそんなことするの? おばあちゃんが邪魔だから? おばあちゃんなんかもう死んでもいいって思ってるから?」 「なに言ってるの? そんなこと思ってるわけないじゃない」  嘘だ。この前そう言ったくせに。お母さんはずるい。  呆然と立つわたしの前で、お母さんがため息をつく。 「あのね、おばあちゃんを施設に入れるのは、追い払うわけじゃないんだよ? おばあちゃんのためなんだから」  ちがう。嘘だ。お母さんは嘘つきだ。  リュックを抱えて背中を向ける。 「蝶子?」  お母さんがわたしの名前を呼んだけど、無視しておばあちゃんの部屋へ駆け込んだ。
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