16人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
「あともうひとつ、昨日あんたに言いたかったんだけど」
リュックを持って突っ立っているわたしに、お母さんが言う。
「おばあちゃん、今度施設に入ってもらうことになったから」
「え?」
わたしは顔を上げてお母さんを見た。
「まだこれからいろんなところに相談していくんだけど。お父さんと決めたんだよ」
「な、なんで?」
わたしの声に、お母さんが不思議そうな顔をする。
「なんでそんなことするの? おばあちゃんが邪魔だから? おばあちゃんなんかもう死んでもいいって思ってるから?」
「なに言ってるの? そんなこと思ってるわけないじゃない」
嘘だ。この前そう言ったくせに。お母さんはずるい。
呆然と立つわたしの前で、お母さんがため息をつく。
「あのね、おばあちゃんを施設に入れるのは、追い払うわけじゃないんだよ? おばあちゃんのためなんだから」
ちがう。嘘だ。お母さんは嘘つきだ。
リュックを抱えて背中を向ける。
「蝶子?」
お母さんがわたしの名前を呼んだけど、無視しておばあちゃんの部屋へ駆け込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!