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リュックを背負ってひとりで廊下に出ると、長い黒髪の女の子が壁を背に立っていた。
わたしの唯一の友だち、隣のクラスの宮崎茜だ。
茜の前を通り過ぎる男子が、ちらちらと茜のことを横目で見ている。
「お待たせ、茜」
わたしが近づくと、茜が長い髪をさらりと揺らして、あきれたような口調で言った。
「チョコのクラス、あいかわらず騒がしいね」
茜はわたしを「チョコ」と呼ぶ。「蝶子」なんて名前、綺麗すぎて照れくさいから、わたしは「チョコ」でちょうどいい。
「うん。うちってほら、うるさい男子ばかりだから」
「ああ、永遠もいるしね」
茜の声に、わたしは何度もうなずきながら訴える。
「そうなんだよ、あいつもうサイテー。さっきだってわたしのこと、うぜぇって言ったんだよ?」
「そんなの気にすることないよ。男子って女子より成長遅いからさ、きっと頭の中、まだ小学生なんだよ」
それは言えてる。ていうか永遠は、成長しないというより退化している。このまま幼稚園生まで戻っちゃえば、少しはかわいいのに。
「ほんと、男子ってガキだよね」
わたしの声に、茜がにこやかにうなずく。
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