水曜日

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 リュックを背負ってひとりで廊下に出ると、長い黒髪の女の子が壁を背に立っていた。  わたしの唯一の友だち、隣のクラスの宮崎茜だ。  茜の前を通り過ぎる男子が、ちらちらと茜のことを横目で見ている。 「お待たせ、茜」  わたしが近づくと、茜が長い髪をさらりと揺らして、あきれたような口調で言った。 「チョコのクラス、あいかわらず騒がしいね」  茜はわたしを「チョコ」と呼ぶ。「蝶子」なんて名前、綺麗すぎて照れくさいから、わたしは「チョコ」でちょうどいい。 「うん。うちってほら、うるさい男子ばかりだから」 「ああ、永遠もいるしね」  茜の声に、わたしは何度もうなずきながら訴える。 「そうなんだよ、あいつもうサイテー。さっきだってわたしのこと、うぜぇって言ったんだよ?」 「そんなの気にすることないよ。男子って女子より成長遅いからさ、きっと頭の中、まだ小学生なんだよ」  それは言えてる。ていうか永遠は、成長しないというより退化している。このまま幼稚園生まで戻っちゃえば、少しはかわいいのに。 「ほんと、男子ってガキだよね」  わたしの声に、茜がにこやかにうなずく。
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