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木曜日
朝、制服を着て鏡を見ると、頭がひどいことになっていた。
ドライヤーで直さないと、さすがにまずい。
言うことを聞かない、ごわごわした真っ黒いこの髪が、わたしは大っ嫌いだった。
食事の並んでいる台所に行くと、隣の居間でお母さんがお父さんに鋭い言葉を投げつけていた。
「おばあちゃんが言うことをきいてくれない」
「昨日もデイサービスに行くのを嫌がった」
「わたしにばっかり押し付けないで、あなたも手伝って」
「あの人は、あなたの母親でしょう?」
わたしはその声を聞きながら、冷めてしまった朝食を食べる。お母さんの作ってくれた目玉焼きもウインナーもひやりと冷たい。
お父さんは困ったようにひと言ふた言言い訳をして、逃げるように会社へ行ってしまった。
「まったくもう!」
機嫌悪そうなおかあさんが台所へ来た。とばっちりを受けたくないから、わたしはさっさと食器を流しに運んで支度を進める。
「なんでわたしばっかり!」
お母さんはわたしのことなど見えないかのように、ため息と文句をひたすら繰り返す。
おばあちゃんが寝たきりになって、この家に笑顔が消えた。お母さんはいつもピリピリしていて、お父さんはそれが嫌で家に寄りつかなくなって、遊びに忙しいお姉ちゃんは知らんぷり。
おばあちゃんが悪いわけじゃないのにな……
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