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それから何代も星詠の長が代替わりしたとある頃、長の屋敷のその外れに人々から隔離するように一軒の離れがあった。
その離れからは、月明かりとも火明かりとも異なる優しくどこか暖かい光がそっと漏れ出していた。もう雪が降る季節であるにも関わらず窓は開かれており、その窓際にはゆったりと腰かけ夜空を見上げる一人の青年がいた。
彼は彼の周囲を舞う何かと話をしているようだった。
「――!――!」
「あぁ、そうだな。今日は星がよく見える」
彼の名は暁。星詠の長の家に生まれた者である。
にもかかわらず彼の足には武骨な金属の枷が付けられ、ここに縛りつけるかのように鎖の端が部屋の柱に堅く固定されていた。
本来敬われるべき立場であるはずの彼のその姿は、あまりにも非情なものだった。彼はこれが自身の日常だと受け入れてしまっているかのように、諦めを滲ませたどこか陰りのある表情で笑みを浮かべていた。
彼の周囲をふわふわと気ままに飛び回り戯れているのは、『星精』と呼ばれる星の精霊たちである。いずれも手のひらに乗る大きさの二頭身の霊体で、その体からは星の光のような優しい光が発せられていた。窓から漏れ出ていた光の正体は彼らだった。
星精たちは暁のことをとても気に入っているようで、毎夜もしくは常に暁の元を訪れて、外の話を聞かせたり遊んだりしていたのだった。そして、そんな星精を暁もまた好ましく思っていた。
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