1.落ちてきた神

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「長がこんな離れにわざわざ何の用だ」  暁の言葉を聞く気も答える気もないのだろう源治(もとはる)は、その言葉を無視して部屋の中を一通り見回した後、嫌悪を露わにして再び暁の方へ向き直った。 「相変わらずここは暗くて胸糞悪ぃな、まるでお前のその淀んだ目みたいだぜ」  これが星精の光が漏れていても問題ない理由だ。源治には、星詠みとしての力がなく星精をその目に映すことが出来ない。  そのため、暁にとっては星精の明かりで灯された室内も彼の瞳には暗い部屋として映っているのだった。 「また八つ当たりしに来たのか。星を詠めない長は暇なんだな」  普段は暁のことを嫌悪して、源治は離れに近づこうともしない。けれど、思い出したようにここを訪れては暁に嫌味や鬱憤をぶつけに来るのである。  力がないにも関わらず長という座に据えられて様々な重責があるとは言え、度重なる源治の幼稚な言動に常々暁は嫌気がさしていた。  そのため少しでもこちらも憂さを晴らそうと常套句(じょうとうく)を返し、想定される罵倒を聞き流す準備をしていた暁だったが、今日はどうやら様子が違っていた。  カッと頭に血が上ったかのように怒りを露わにした源治は、暁の胸倉を掴み持ち上げた後、固く握りしめた拳で頬を殴り飛ばしてきた。  暁の体が床に打ち付けられるのとともに、鎖の音がけたたましく室内に木霊した。
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